【短編小説 おすすめ 恋愛】LGBT・マイノリティ好きもサクッと楽しめる!寺田健吾「祈りのゆくえ」読書レビュー

「短編小説で、キュンとしたり、ちょっと切ない気持ちになったりしたいな…」
「でも、重たい話はちょっと苦手。サクッと読めて心に残る恋愛小説ってないかな?」
「LGBTやマイノリティがテーマの作品にも興味があるけど、どれから読めばいいんだろう?」

もしあなたがこんな風に思っているなら、ぴったりの一冊があるんです!

それが、起業家兼文筆家として活動する寺田健吾さんの短編集「祈りのゆくえ」。
「LGBTやマイノリティがテーマ」と聞くと、もしかしたら「ちょっと重いのかな?」なんて身構えちゃうかもしれません。
私も最初はそうでした。
でも、実際に読んでみたら、びっくりするほどスッと心に入ってきて、気がつけば夜中まで夢中で読みふけってしまったんです。

むしろ、純粋な恋愛小説として楽しめる、珠玉の短編集でした。
今回は、そんな「祈りのゆくえ」の魅力をご紹介!

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著者は寺田健吾さん どんな人?

寺田健吾さんは、現在起業家として活躍されている方。
でも実は、学生時代にも小説を出版し、渋谷の大きな書店で初版完売を記録したというすごい経歴の持ち主なんです。

そんな寺田さんが、様々な人生経験を積んだ後に再び筆を執ったのが、この「祈りのゆくえ」。
だからこそ、物語に深みがあって、登場人物たちの言葉が胸に響くのかもしれません。

「祈りのゆくえ」は8編の短いお話が詰まった短編小説

この本は、8編の短いお話が詰まった短編集
LGBTやマイノリティの人たちの、儚くて切ない恋愛が描かれています。

本の帯にある「それぞれの祈りは届くのだろうか…?」というコピーの通り、どの物語の主人公も、心の中に大切な「祈り」のような想いを抱えています。

ちょっと面白いのが、作品の並び方。
寺田さんご自身の名前が入った作品と、フォロワー計50万人の恋愛作家「メンヘラ大学生」の作品が交互に収録されているんです。
これによって、いろんな世代や立場の人の視点から、いろんな物語を味わうことができますよ。

【寺田健吾×メンヘラ大学生の共著短編小説:祈りのゆくえ 】

  • 1. 祈りのゆくえ (寺田健吾)
  • 2. ふたりの記憶(メンヘラ大学生)
  • 3. 24時の秘密 (寺田健吾)
  • 4. 本当のさようなら(メンヘラ大学生)
  • 5. Escape (寺田健吾)
  • 6. 紫色のお守り(メンヘラ大学生)
  • 7. 橋の上での約束 (寺田健吾)
  • 8. いつまでも消せない(メンヘラ大学生)

つまりこの本は、二人の作者の作品が読めるんです。
1度に2度美味しいお得感もある短編小説となっています。

ネタバレ注意!特に心に残った恋愛短編小説をチラ見せ

今回は特に印象的だった2作品紹介します。

表題作「祈りのゆくえ」——10年越しの気持ちに名前をつける物語

雨音が静かに響くバーのカウンターから始まるこの物語は、まるで上質な短編映画を見ているような、しっとりとした読後感を残してくれました。主人公・圭介が恋人の健と過ごす穏やかな時間と、10年以上前の高校時代の水野先輩への淡く切ない恋心が交錯し、胸の奥がキュッと締め付けられるような感覚を覚えました。

特に印象的だったのは、高校時代の水野先輩とのエピソードです。「骨がとろけるほど好きだった」という言葉に表れる初々しい想い、そして伝えられないもどかしさ。二人乗りした自転車の記憶は、誰しもの心の中にある甘酸っぱい青春の1ページを呼び覚ますかのようです。その純粋な想いは、読んでいるこちらまで切なくなりました。

一方、現在の恋人・健との関係は、静かで確かな愛情に満ちています。「この祈りのゆくえはどうなるのだろう」という圭介のモノローグには、過去の経験を踏まえた上で、今度こそ大切に育みたいという切実な願いが込められているように感じました。
過去の「言えなかった好き」と、現在の「大切にしたい好き」。
その二つの感情が、雨の情景と共に美しく描かれており、短い物語ながらも深く心に染み渡ります。
自分も高校生の時、好きな女の子に言えなかったなぁ。そして30代になった今も時々思い出すなぁとどこか懐かしい気持ちにもなりました。

恋愛の喜びだけでなく、痛みや切なさも丁寧に描くことで、「好き」という感情の多面性を教えてくれる作品です。
短い時間で登場人物の心の機微に触れ、しっとりとした感動に浸りたい。
そんな気分の時にぴったりの、珠玉の恋愛短編だと感じました。読後には、雨上がりの澄んだ空気のような、清々しい余韻が残ります。

「Escape」——逃げた先にあったのは、誰かと寄り添う温度

日常の息苦しさから逃れるように、龍之介とあかねが当てもなく旅に出るこの物語は、読んでいるこちらも一緒に旅をしているような、不思議な解放感を味わわせてくれました。
二人の関係は恋人でも友達でもない、けれど確かな絆で結ばれている。
そんな絶妙な距離感が心地よく、彼らの言葉や行動の一つ一つに惹きつけられました。

特に印象的だったのは、旅の途中で訪れる先々での出来事です。
フェリーで偶然隣り合わせになったり、見知らぬ土地の居酒屋で地元の人と語らったり、時には予想外のトラブルに見舞われたり。
そうした経験を通して、二人の心が少しずつ解き放たれていく様子が丁寧に描かれています。
「ここに来た理由は特にはありません。直感かな」
というあかねの言葉は、計画性のない旅だからこそ出会える偶然や発見の楽しさを象徴しているように感じました。

龍之介があかねに抱く「自由奔放なあかねが好きだった」という気持ちと、あかねが龍之介に見せる素直で飾らない姿。
互いに深く詮索せず、ありのままを受け入れ合う二人の関係性は、読んでいてとても温かい気持ちになります。
特に、龍之介が苦手なトマトをあかねのために食べるシーンは、言葉にしなくても伝わる優しさに溢れていて、思わず頬が緩みました。

旅の終わりが近づき、「もうそろそろ春が来る」という言葉と共に、二人が新たな一歩を踏み出そうとする予感に、寂しさとともに希望も感じました。
この物語は、日常に疲れたり、何かに迷ったりした時に、ふと「逃げ出したっていいんだよ」と背中を押してくれるような優しさがあります。
自分自身、会社員をしていて逃げ出したくなることがよくあったのでなんだかすごく救われた気持ちになりました。
そして、旅の途中で出会う何気ない風景や人々との触れ合いが、どれほど心を豊かにしてくれるかを教えてくれました。読後には、どこか遠くへ旅に出たくなるような、爽やかな気持ちに包まれます。

なぜ寺田健吾の小説は読者に響くのか

寺田さんの作品のすごいところは、「LGBTの物語だから」ということを意識させないところ。
気がつくと、登場人物の性別や恋愛対象なんて関係なく、その人の気持ちに深く共感しているんです。

  • ドラマチックすぎない「日常の中の祈り」
    特別な事件が起こるわけじゃない。でも、誰もが心の中に抱えているような、言葉にできなかった想いや、ささやかな願いが丁寧に描かれています。
  • 「恋愛」という枠にとらわれない感情の描写
    「好き」という気持ちのいろんな形を、レッテルを貼らずにそのまま見つめている感じ。だから、読んでいる私たちも自分の経験と重ね合わせやすいんです。
  • 押しつけがましくない、優しい筆致
    人と繋がることの難しさや温かさを、静かに、でも確かに伝えてくれます。

LGBTやマイノリティの恋愛を描きながらも、「それは特別なことじゃないんだよ」と語りかけてくれるような作品たち。
だからこそ、誰が読んでも「これは私の物語かもしれない」と感じられるのだと思います。

短編恋愛小説なのに、読み応えバツグン!その秘密は起業家だからこその構成力かも

物語はそれぞれ独立しているのに、全部読み終えると、まるで一本の映画を観たような満足感があるんです。
これは、起業家でもある寺田さんならではの構成力なのかも。

それぞれの物語が、まるでパズルのピースのように組み合わさって、大きなテーマを浮かび上がらせる。
だから、サクッと読める短編なのに、しっかりとした読後感が得られるんです。

読んだ後、なんだか優しい気持ちになれる短編小説

「祈りのゆくえ」というタイトル通り、主人公たちの「祈り」がどうなるのか、はっきりとした答えが示されるわけではありません。
でも、読み終わった後、不思議と心が温かくなるんです。

重いテーマを扱っているはずなのに、読後感は決して暗くない。
むしろ、「人っていいな、愛って素敵だな」と素直に思える。説教くさくなくて、でも心にちゃんと残る。
こういう作品って、今の時代にすごく大切なんじゃないかなって思います。

こんなあなたに、特におすすめ!

  • 短編小説で手軽に感動したい!
  • いろんな形の恋愛に触れてみたい!
  • LGBTやマイノリティがテーマの作品を、優しい気持ちで読んでみたい!
  • サクッと読めるけど、心に残る物語を探している!
  • 日常にちょっと疲れていて、優しい物語で癒されたい!

最後に~【短編小説 おすすめ 恋愛】LGBT・マイノリティ好きもサクッと楽しめる!寺田健吾「祈りのゆくえ」読書レビュー~

正直、LGBTがテーマと聞いて、最初は「自分には関係ないかも…」なんて思っていた私。
でも、読み始めたら、そんな考えはどこかへ飛んでいきました。

恋愛、人間関係、将来への不安…。誰もが一度は感じたことのある普遍的な感情が、そこにはありました。

「祈りのゆくえ」は、読む人の心の奥深くにそっと触れてくるような短編集です。何気ない会話、過ぎ去った時間、言えなかった言葉。そんな日常のカケラを丁寧に拾い集める寺田さんの文章に、静かな感動を覚えました。

LGBTやマイノリティというテーマに関心がある方はもちろん、
「最近、心が乾いているな…」と感じている方にも、ぜひ手に取ってみてほしい一冊です。

また寺田健吾さんの名前、覚えておいて損はないですよ。
実は、寺田さんは現在、商業出版も控えているそうです。
次回作もきっと私たちを魅了してくれるはずです。