やる気が乗らない。そんな気持ちを奮い立たせたい時は、自分に対してこう記述しながら声をかけよう。

「お前ならできる!」あるいは、「あなたならできる!」

何らかの行動を起こすときには、自分に「あなた」や「お前」と呼びかけ、アドバイスを与えたりやる気を出させようとしたりしたほうが、「私」や「自分」を使って言い聞かせるよりもパフォーマンスが向上することが、研究から明らかになりました。

研究内容は、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究者サンダ・ドルコス博士と同大学のドロレス・アルバラシン教授は、
143名の学部生を対象に、一連のアナグラム・パズルを解かせた。
そして、パズルを解く前に、自分に対するアドバイスを書き出すよう依頼した。

その際、学生の半数には「私」「自分」という呼びかけで、残りの半数には「あなた」「お前」という呼びかけで書くよう指示を出した。

その結果、「あなた」や「お前」という呼びかけを使った学生のほうが、解いた問題数が多く、パズルに関してより前向きな姿勢を持ったのだという。

さらに別の研究では、135人の学生を対象に、今後2週間は普段より運動量を増やすことを自らに言い聞かせるよう依頼した。
この場合も、「あなた」や「お前」と呼びかけた学生グループのほうが、「私」と呼びかけたグループに比べて、自分に課したタスクに関してより前向きな姿勢を持ち、運動量を増やすための計画まで立てたと報告されている。

「驚くことではありません。以前の研究から、高い自制心や行動力が求められる状況において、人は無意識のうちに、
自分に“お前”と呼びかけることがわかっています。また、否定的な出来事の後の状況でもそうです」。
ドルコス教授は、米ハフポストに寄せたメールでそう述べている。

「人は、“あなた”や“お前”という呼びかけとともに、アドバイスをあげたりもらったりすることに慣れています。 行動の前に自分を奮い立たせる時は、“あなた”や“お前”という呼びかけを好むようなのです」と、ドルコス教授は述べている。「“あなた”を使って自分に助言を与えると、より幅広い視野に立つことができます。大切な人が自分の行動をどう見るか考えるようになったり、他人からこれまでに得てきた励ましなどを再び思い出したりします」

ところで、研究者らはなぜ、自らへ言い聞かせる手段として、口頭ではなく、記述を選んだのだろうか。

「セラピー治療では以前から、自らと会話をする手段として、記述が取り入れられてきました」
と、ドロレス教授はメールで説明してくれた。
「しかし今後は、より踏み込んだ研究を行ない、書き記す方法と、心の中で語りかける方法の、どちらが自分自身に対してアドバイスを与えるときにより役立つのかを見極める必要があると思っています。その効果はおそらく、環境によっても違い、個人の好みでも違ってくるでしょう」

この研究は、「European Journal of Social Psychology」(ヨーロッパの社会心理学学術誌)に掲載されました。
[Jacqueline Howard(English) 日本語版:遠藤康子/ガリレオ]